相続登記と空き家特例(3000万控除)の関係 | 広島の司法書士めぐみ法務事務所  

相続登記と空き家特例(3000万控除)の関係

不動産を相続する際に気をつけること

両親から相続によって譲り受けた不動産を売却する前提として、「名義が父のままで相続登記をしていなかった!」と、慌てて相続登記の依頼をいただくことがあります。
この場合に、きちんと売却までのことを考えていないと、損をしてしまうケースがあります。

母が亡くなった。相続人は長男と二男。父は10年前に亡くなっており、両親が住んでいた自宅の名義は土地も建物も父のままになっている。名義を長男である自分に変えて、売却したい。

この場合、通常であれば父から息子への名義変更を行います。この名義変更をした場合の登記簿は、次のようになります。

順位番号  登記の目的 受付年月日・受付番号   権利者その他の事項
所有権移転

昭和〇年×月△日

第××××号

原因 年月日売買

所有者 ●●(父)

所有権移転

令和〇年×月△日

第×××号

原因 平成20年1月1日相続

所有者 □□(長男)

この不動産は、本来、父が亡くなった際に、母、長男、二男で遺産分割協議をして、名義変更をすべきでしたが、協議をする前に母が亡くなってしまったため、長男、二男の二人で協議をして、父から長男へ遺産を引き継いだ例です。

時系列でいえば、父が亡くなったあと、母が一人で住んでいたので、母が相続していた、といえる状況であったかもしれません。しかし、母も亡くなってしまった以上、わざわざ母の名義を入れるメリットもないですし、一度母名義にしてからさらに長男名義にすると、二回分の登記費用がかかってしまうため、便宜上父から直接長男へ移転するような内容で遺産分割協議をしています。

実務上、この方式はよく行われている方法です。

ただし、不動産の売却を控えており、なおかつ売却益が出る場合には、次の特例を使うことがあります。

(国税庁ホームページより抜粋)

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から平成31年(2019年)12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
 これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。

上記は、近年問題になっている、空き家の発生を抑制するための政策で、「空き家特例」と呼ばれています(以下、「空き家特例」といいます)。

この「空き家特例」を受けるための要件となるのが、

相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

です。

これを先ほどの事例に当てはめてみると、長男は不動産売却時に空き家特例を使えるでしょうか。

答えはNOです。なぜなら、「相続の開始があった日」=父が亡くなった日は平成20年で、10年以上経過しています。要件となる3年をとっくに経過しているからです。

しかし、母が一度名義を取得していたらどうでしょうか?時系列にすると以下のとおりです。

  1. 父の相続発生(平成20年)
  2. 母の相続発生(平成31年)
  3. 不動産の売却(令和1年)

2と3の間は3年が経っていないので、もし、母が一度父名義の家を相続していたとなれば、空き家特例が使えます。
そして、少し話が難しくなるのですが、子供が二人いる今回のケースでは、一度母に取得させる遺産分割協議をすることができるのです。
一度自宅を母に取得させた場合の登記簿は次のようになります。

順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号   権利者その他の事項
所有権移転

昭和〇年×月△日

第××××号

原因 年月日売買

所有者 ●●(父)

所有権移転

令和〇年×月△日

第×××号

原因 平成20年1月1日相続

所有者 ▲▲(母)

所有権移転

令和〇年×月△日

第×××号

原因 平成31年3月3日相続

所有者 □□(長男)

母の名義が加わりました。これで、父名義の自宅を一度母が相続して、それを長男が取得したことが登記簿上表示されました。

二つの登記の違いは、遺産分割協議書のちょっとした工夫なのですが、母の名義を入れるかいれないかで、税務上の控除が変わってくるのです。

結果的には同じでも、登記簿の記載が大切になることがある

普通に考えると「どちらも同じじゃないの?」「母の名義を入れないと控除が受けられないなんて、おかしいんじゃないの?」と思われるかもしれません。
しかし、相続が発生していて、「名義変更」の過程で、「遺産分割協議」という法律行為が行われています。

父から長男に引き継がせる約束をするのと、父から母が引き継いで、その後長男が引き継いだのとでは、法律上は明確な違いがあり、登記簿謄本には、その時系列が正確に表示されていることになります。
そのため、名義変更の仕方によって、税務上損をしたり、控除を受けて得をしたりする場合が生じてしまうのです。

相続後、不動産をどうしたいか?までがストーリーです。

相続登記を検討されている場合、相続をした後、その不動産をどうしたいかはお考えでしょうか?

相続後の見通しによって、誰が名義を持った方がよいのか、またどのように遺産分割協議をした方がよいのか変わってくることがあります。

売却したいのか、いつか住みたいのか、運用したいのか等、その先のお話まで是非お聞かせください。お力になれるご提案ができるかもしれません。

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3 COMMENTS

福原  宏幸

空き家特例の件で教えてください。実家の父が亡くなり母に名義変更しないまま母も亡くなり、父から子供への相続手続きは済ませました。空き家特例を受けるのは、上記によれば父から母に相続、母から子供に相続という事が出来ると成っていますが、
①亡くなった母の登記署名、押印行為は出来ないのでどうされますか?
②子供から母へ、母から子供に相続変更になれば、それぞれに相続税または贈与税が
掛かり、その金額は、半端ではなくなるのでは?

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megumi-law

コメントありがとうございます。
1について・・・亡くなったお母さまの相続人が、代わりに遺産分割協議をして署名捺印します。
2について・・・相続税がかかるケースか、かからないケースかによります。相続税がかかる事案でしたら、税理士に相談のうえ、相続税が抑えられるような遺産分割方法を優先するのが通常です。
贈与税については、今回は「相続」を原因とする登記ですのでかかりません。
また、すでに行った相続登記を変更することは可能ですが、遺産分割方法のやり直しが税務上認められるかどうかは別問題のため、登記を直せば空き家特例の適用が受けられるとは限りませんのでご注意ください。
引き続き詳細なご相談をご希望の場合は、問合せフォームよりお問合せください。

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